パンチの独り言

(2014年11月10日〜11月16日)
(cheap、大人〔たいじん〕、投げ遣り、楽、無駄、騒音、尚早)



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11月16日(日)−尚早

 冷え込みが増し、体を縮めることが多くなった。紅葉前線の南下も勢いを増し、愈々冬支度が必要な季節がやってきたようだ。外に出ることも億劫になり、暖房器具が欲しくなる時期、徐々に厚着になっていくけれど、急激な変化に体の反応は追いつかない。そのうち慣れるものなのだが、毎度のこととて文句が出る。
 そんな時、ふと足元を見ると、黄色い筋が路面に浮かんでいる。確かめたわけではないから、自信たっぷりにとはいかないが、この色と表面の感じは、春先に悩まされる例の花粉ではないか。それにしても、こんなに早くから飛び散っているのかと、勝手に驚いていたが、どうなのだろう。反応の早い人では、年明けから悩まされると伝え聞くが、まだ年の暮れまでひと月半もある。体の反応は、寒さを感じるのにも、色々な変遷を繰り返す。そのことを思うと、花粉症の反応も、何も表面に現れたものだけで考えるのではなく、体内の変化を測ることが必要に思えてくる。毎年のように繰り返されるものだが、鼻水や目の痒みといった形での悩みは、単にその反応がある線を越えて高まった結果であり、体の反応自体は、もっと複雑なものが組み合わさっているのかもしれない。多くの人は、そんなことを考えるのも面倒と、根治への早道を知りたがるが、急がば回れとでも言うべきことで、本当の原因や反応の道筋を知ることで、正しい対応が可能となるのかもしれない。元々、昔には目立たなかったものが、最近特に目立ち始めていることからしても、複合的な要因を考えるべきで、それぞれを並べてこそ、真の原因を追究できると思えるが、世の中は安直な結論に惹きつけられる。免疫反応の異常の一つとして、アレルギー反応が挙げられる。これがなぜ増えたのかは、諸説紛々の状況にあり、確定的な原因は定かではない。表面的なことばかりに囚われていることで、視野が広がる機会は奪われている。それにしても、黄色の跡は少し早すぎるのでは。

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11月15日(土)−騒音

 ある大学病院の問題を伝えるニュースが流された。ある新聞がその情報を得て、他に先駆けて伝えたのだ。特ダネとか、すっぱ抜くとか、そんな言葉で表現される記事の内容は、医療過誤の問題を扱ったものだが、手術の失敗と伝えられても、素人にはその数が多いのか判断がつかない。ただ、そんな事故があったと思うだけだ。
 翌日には、他紙が同じ情報を追従する形で流していた。大きな違いは、第一報を受けて、件の病院が開いた会見の様子が伝えられていたことで、元々の情報に関する話は、殆ど無いに等しかった。確かに、正式の手続きがとられていなかったことに、大きな問題があるのは事実だが、始めに伝えられた数値は、多いのか少ないのかについては、続報は無かったように思う。こんな所に最近の記者の質低下が現れているように思うのは、こちらの穿った見方のせいだろうか。例えば、手術技法に関しての解説は、通り一遍のものが示されるが、一般的に術後に亡くなる人の数の割合は多いのか全く触れられていない。おそらく、何人でも構ったことじゃないのかもしれない。死人が出たというだけで一大事と伝えておけば、鵜呑みが得意な人々の関心を引くことができるからだ。だが、特ダネを逃して悔しがる記者ならば、その穴を埋める工夫位しても良いのに、とは言い過ぎだろうか。数字の問題、手続きの問題、世の趨勢、様々な捉え方がある筈だが、ただ横並びの記事に落胆せざるを得ない。視野の狭さが問題と捉えれば、同じ日の編集記事にも同じ類いのものがあった。大学での講義風景に触れたもので、私語が目立つのは講義を熱心に行い過ぎるから、という解釈が紹介されていた。頻繁に休みを入れることで、危機感から聞く気が増すというのだが、勝手な論にしか見えなかった。それを大事なことのように伝えるコラムにも、的外れの仲間といった印象を受ける。私語は指摘すれば止むだろうし、邪魔ならば退室させれば済む。気にならないのなら無視すれば良い。それを講義内容と結びつけるのは、如何にも質を論じているかのように見せているだけだろう。一方、最近は声で会話を交わさずとも、文字を電送すれば済むではないか。彼らにとっての私語が変貌したことに、あれほど情報伝達手段を論じた人が気づかぬとは情けない。

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11月14日(金)−無駄

 政に関わる人々の非常識は、今に始まった事ではない、と言われる。だが、その加減は、かなり際どい所まで進んでいるのではないか。世襲制への批判が強まったときも、その問題点の殆どは、理解に苦しむものだった。結論ありきの議論に関して、何の違和感も持たない人々に、適切な対応は望むべくもない。
 そんな輩に、国の行く末を託していいのか、という議論は、時に吹き出てくるのだが、世論調査の質問項目を見ても、愚民どもには、話し合いの価値は理解できそうもない。例えば、現政権の人気度を測る質問も、他の選択肢が無いとの理由が、当然の如くに並んでいるのを見れば、それぞれの力を測る為の知識も知恵も持ち合わせていない人間に、そんな質問を浴びせても無駄、と思えてくる。調査の目的も、実は確かな数値を手に入れる為だけであり、結論は、そのずっと前に決まっているのだ。こんな社会では、議論の意義などある筈もなく、決められた結論への賛否のみが、議題になっているだけとなる。その結果、よりより社会が築かれた時代と違い、混迷の時代は誤った結論へと繋がり、社会が良くならないという表現が、批判の決まり文句として使われる。金の管理など、違法行為を暴かれた人々も、実は、氷山の一角に過ぎず、細かく調べれば、馬脚を現すことは確実だろう。確かなことが言えない中で、情報流出が続くのも、彼らの常識の欠如と直結する。その一方で、世間知らずの政治バカからの、思惑に溢れた情報を、さも重要と扱うメディアにも、同様の職業意識の欠如が見られる。本来の仕組みとして、結論を出すための委員会が設置される中で、その議論以前に流れるガセネタに飛びつき、トップ記事と扱うのは、非常識ではないのか。バカ同士の高め合いのように、下らない筋書きを作り、世論を操作しようとするのが、政の役目と思うようでは、お里が知れる。

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11月13日(木)−楽

 誰しも効率よく生きたいと思うのではないか。この話は、効率を考えているように見えるが、実は、単に楽がしたいだけというのが多い。努力せずに手に入れる為には如何にすべきか、という問題に取り組むが、楽が第一となるだけに、取り組みも努力なしとなる。楽と聞けば飛びつくが、ただそれだけなのだ。
 そんな人が増えてくると、ちょっとした噂で彼らの行動を制御できることに気づく。具体的な例を示せなくても、現代社会が抱える問題の多くが、そこから始まっていることが明らかだからだ。根も葉もない噂に、振り回される人々は、ある共通点を有している。自分の考えがなく、人の意見に引きずられるのだ。これもまた、楽をしたいが鍵となる。自分で考えようとしたら、その材料を集めねばならず、更にそれを元にして、考えを巡らし、まとめなければならない。一度試みてみればわかるが、かなりの時間を費やしたとしても、大した考えもまとまらない。不慣れな作業に、嫌気がさせば、時間の無駄が気になってくる。面倒と思う人は、こんなことは一度で十分となり、自分の考えはないものとして、他人のものを借りることにする。手数をかけるのであれば、こんな時にも、他人の意見を参考に、思考を進めるのだろうが、既に諦めたことだから、進める手間もかけずに、鵜呑みを繰り返すことになる。効率が良いのか、はたまた、単純に楽がしたいのか、理由ははっきりしなくても、結局、何も考えずの行動であることに変わりはない。そんな考えでは、責任が表に出る筈もなく、対象が定まらず、社会とか世間の責任といった言葉が並ぶ。ただ、これが社会問題となるのは、この手の人々が深い考えを持たず、何かしでかすことが多い為で、秩序を乱したり、不正を働いても、何も悪いと思わないからだ。彼らにとって、知ろうとする行為も、楽ではなく、面倒なものらしい。

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11月12日(水)−投げ遣り

 自動車の販売店を訪れると、昔は、販売成績を示すグラフが何処かに貼ってあったが、今は、そんなものは見つからない。目標や実績がどうでもいいものになった訳ではなく、数値は何処かに仕舞い込まれているのだろう。買い物に訪れた客にまで晒し、不特定多数に個人情報を流すことは、今では許されないことなのだ。
 数字を使って順位をつけることに、現代人は慣れっこになっている。子供の頃から、何かと順番をつけられ、それにより、進むべき道が決められてきたからだ。それでも、学校の廊下に貼り出された成績表に、一喜一憂した生徒の姿はなく、順位付けは意欲を引き出す手立てとはならず、イジメの原因となったり、人権問題のように扱われることとなった。一方で、皆が共通の情報を持っていなくても、自身の順位は知らされるから、それを理由に進路を定められても、何の疑問も感じない人が増えた。夢を実現する為に、という誘い文句ばかりを聞かされて育った人でも、冷たい数値を基準に決められることには、簡単に従ってしまうものらしい。進路の最終選択は、おそらく、最高学府への進学だろうが、ここで細かく分けられた人々は、一流か二流か、はたまた三流か、などという言葉を簡単に受け入れる。しかし、人生における進路はそこで終わるわけでなく、社会に出た後も道は続いている。もし、大学での順位がそのまま社会にまで持ち込まれたら、どんなに詰まらない人生になるだろう、と思うのは、今時の人ではないらしく、実力を認め、それなりの地位や収入で満足するのが、現代人となるらしい。学校に通っていた頃も、おそらくそうだったに違いないのだが、現状を受け入れることしかできない人々は、各段階で使われる評価基準の違いに気づかないようだ。それまでの積み重ねが反映されるのだから、自らの怠慢の結果として受け入れるべき、などと反省するならまだしも、現実には、不満を抱きながら、仕方ないと沈黙する。三流だから、などと愚痴をこぼす人に、誰が期待するのか。こんな人間は、底辺に留まるしかない。

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11月11日(火)−大人〔たいじん〕

 世界の警察官を自任し、紛争地に軍隊を派遣していた国も、最近は全く違う戦略を実行しているようだ。地下活動にも似た手法に、厳しい批判の声が上がっているが、効率を第一とする国にとって、これが当然と見るのだろう。口だけでなく、手を出すことを常とするだけに、その状態が解除されない限り、戦いの火種は消えそうにもない。
 大国たる態度を維持しようとしてきたことに、批判の声はそれほど強くはない。それ自体を問題と見るのではなく、警察官のように傲慢な態度で、人の家にドカドカと上がりこむことに、批判が集中しているのだ。それも、大人としての品格を見せるどころか、子供の喧嘩のような振る舞いが主となると、大国とは名ばかりとの指摘も出てくる。いい大人が何故、と揶揄された大統領は、まるで仕返しのような振る舞いに終始し、その怒りは簡単には収まらなかったが、どこまで続くのかわからぬほど、泥沼化した戦いは、収拾がつかないものとなっている。確かな展望を持った決断ではなく、おそらく、子供の反応のように、反射的なものが主だったのだろうが、その後始末を仰せつかる人間には、難しい課題が山積みにされる。国の頂点に立ち、様々なことを決定する立場にある人間は、たとえ怒りを抱いても、それを露骨に表に出すことは憚られる。煮え繰り返るほどの状態でも、冷静な表情を保ち、大人らしい行動を続けることが、その任にある人間のあるべき姿と言われるのだ。かの大統領も、冷静さを失ったままに、激しい口調を繰り返していたが、こんな行動は、不利に働くしかない。一方、久々の会談の場で、何とも表現しがたい芝居を打っていた隣国の指導者には、駄々っ子を見る思いさえ催した。誰の助言か分からぬが、大人の振る舞いとは思えぬもので、如何に自国の民が餓鬼のようだとしても、控えるべきものだったのではないか。喧嘩っ早い人間同士なら、一発二発やりあったのでは、などと思ってしまった。

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11月10日(月)−cheap

 経済活動において、金銭取引は最重要とされ、まずは低価格の追求が目標とされることが多い。国内生産しか考えられなかった時代にも、都会より地方での生産が重視されたのは、賃金格差という明らかな地域差があったからだ。身近な条件でさえこんな思惑が働くのだから、それが国際取引となっても、同じ論理が通用する。
 発展の途上にある国にとって、国力を増強する為の手っ取り早い方法は、何らかの形で外貨を稼ぐことと言われる。天然資源を頼みにできる国なら、それを外貨獲得の手段とすれば良いが、付加価値を加えようにも、それは難しくなる。品質を謳ったとしても、それを更に高める手段は無く、国際協力の体制を作り、価格設定に力を及ぼすくらいが精々となる。だから、資源そのものを取引するのではなく、それに手を加え、加工品として外に出すことで、付加価値を高めようとする動きが、次に来るようだ。それに対し、資源をあまり持たず、外貨獲得の為には加工品の取引に頼るしかない国にとっては、工業技術の向上が課題となる。価格競争だけを課題とすれば、低賃金を武器に戦えばいいが、安かろう悪かろうと揶揄されることとなる。つまり、低価格にしか魅力がなく、使い物になれば良いといった程度にしか期待されない。物真似の国と馬鹿にされた時代を、若い人々は全く知らないけれど、高い工業技術を誇るこの国も、嘗てそんな時代を経験してきた。その後、技術革新を経て、製品の性能や品質を魅力とできるようになると、付加価値を梃子に価格への転嫁も可能となった。こんな経過は、他の工業生産を続ける国にも当てはまるだろうが、近隣の二つの国を眺めると、随分事情が違う気がする。高い技術までは到達したものの、何かが足らない気がする隣国は、早くも下り坂に入ったようだが、安かろう悪かろうを経て、そろそろ品質に目を向け始めた国の方は、低価格の勝負が生活水準の向上により難しくなった。だが、国民性の問題からか、悪かろうに安住する心が、意図的に悪質な製品を流すことをよしとする。偽物大国の称号は、自ら拭い去らない限り、消えないようだ。

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